作品・制作について|初出=シェル美術賞アーティストセレクション(SAS)作家紹介(2013年12月)


日常にはメディアやインターネットを通じて膨大なピクチャーイメージが溢れている。プライベートで撮影されたイメージでさえ無尽蔵に蓄積され、画像を見返す作業は重労働と言ってもよい。我々は有用、無用様々なイメージのハイパーインフレの中で生きていて、イメージを「見る」ことにはある種の困難を伴っているのではないだろうか。
膨大すぎるイメージはそれら個々のプライオリティーを溶解させるが、しかしそれは取るに足らないイメージの存在も同等に浮上させる。現実はそうした不用な忘却のイメージに包囲されているのだと思う。また、時に重要なイメージでさえ忘却の彼方へ埋没してしまう。
私の制作は写真を「見る」ことから始まる。そして写真に絵画的プロセスを加えることで、視覚経験、記録や記憶、存在といったものの不確実さや恣意性を私は知ることになる。私は「見る」ことをより解りたいのである。

 

https://www.idss.co.jp/enjoy/culture_art/art/2013/sas.html