Photos and a Mother


Background”で使われている写真は自分の生い立ちの―背景を成す―写真である。しかしこれらの写真は誰のものであるかを考えたとき、それは自分ではなく親のものであることに気づいた。親が子供の成長を記録したい、写真に収め見返したい、あるいはそれを我が子に残したい、というごく自然とも思える欲望のものである。

これらの写真について何かを語るべき主体は自分ではなく親ではないか。私は実家の母を訪ね写真を見返してもらい、思いつくままに語ってもらった。ロラン・バルトが『明るい部屋』*で亡き母の幼少時代の写真について語ったのとは逆に。

記録は二日かけて行い、この作品はその時の映像と音声で構成している。とくに写真を見返すその手つきは言葉以上に何かを語っている様にも思え、注目した。

 

 

 

* ロラン・バルト『明るい部屋―写真についての覚書』(花輪光訳)みすず書房 1985年